第拾九話 『空』雨は降り続き、街中が灰色の空気に支配されています。 正体がバレて吊るされている歩は、声にならないまま弟の名を呟いていました。 新撰組屯所では、左之助や新八らが、出動の指揮をとっています。 上層部が出払っているので、二番隊と十番隊で出る模様。 いつもの朗らかな雰囲気は微塵もなく、緊張した面持ちの左之。 (カッコイイ~~~!vvと言いたいけれど、時が時なんで、門の影から見守る星明子(飛馬の姉)になっておきます。) 鉄は烝の部屋を訪れ、 「俺のことを怒ってもいいから、歩姉のところに行ってやってくれ。」 と頼みます。 両親や兄に可愛がられ、素直に育ってきた鉄とは反対に 忍びとして生きる為に姉弟の関係をも無い物として来た烝。 そんな烝にしてみれば、鉄の言う事は大きなお世話でしかないのでしょう。が、そのひたむきな姿勢に、ついつい自分の中の人間らしい面を引き摺り出され、苦しんでいます。 鉄に 「お前が行ったらエエやろ。泣かれて遺言聞いた仲や、向こうかて喜ぶンやないか。」 と、言ってしまいました。口がすべったんですね。 姉と仲の良かった鉄に、少しは嫉妬していたのでしょう。自分では気がついていなかったのかもしれませんが。 (この辺りがまだ『若い』んだねススム。カワイイよ。) 怒って烝を庭に突き落とし、馬乗りになって 「歩姉はなぁ、オレに、『弟』のこと頼むって、お前の事を頼むって言ったんだよぅ。」 と泣きじゃくる鉄。 歩も最後には、『忍』としてではなく、ひとりの『姉』として言葉を残していたのですね。 それを聞いて愕然とする烝。 (どうでもいいけど、こんな土砂降りの日に、空に向かって目を見張っていたら、雨が目に入って痛いだろうと思ったのは私だけではあるまい。) 「『姉ちゃん』なんて言う資格ねぇよ。」 鉄は言い残すと、左之助達に付いて行きました。泣きながら。 浪士達の溜り場を襲う新撰組、抵抗する者は切り、降伏した者は『ひっとらえ』、逃げた者は二番隊が追っているそうです。 残っていた血まみれの着物を抱きしめる鉄。 とうとうじっとしていられなくなった烝も走り出します。(屋根の上を…υ。でもカッコいいんだ。)そして、辿りついた屋敷の中庭で、変り果てた姉の姿に体面するのでした。 アニメのスタータBOOKでも取り上げられていましたが このアニメ、美術設定がとっても美しいです。 (街中の建物に京都らしさを感じない点だけはちょい不服ですが) それに、平田監督のインタビューでも言われていましたが、背景等の画像処理にとても手間と時間を使ってるようです。 実際のカメラを意識した露出で、光と影を微妙に表現したり、何度も加工して仕上げたりと、力が入っています。 今回も水の感じさせ方が美しいなと思いました。 雨だけでなく、室内の湿気の感じだとか(それが多分『光と影の使い方』だと思いますが)、雨が上がった直後の地面等、小さな絵にも気を配っているのが感じられて、それがまた話を盛り上げていたように思います。 雨の中、姉の躯を前に佇む烝に、背後から明里(サラ)が 「貴方が死ねば良かったのに」と、言葉を投げつけます。 膝を着く烝。 そんな明里も、烝の中途半端さを攻めながら、かと言って彼を殺すわけでもなく 「もう会う事もないでしょうが」と言ってるのが???な私。 屋敷内を探し回っていた鉄の目に飛び込んで来たのは 姉の躯に上着をかけてやっている烝の姿。 後から追いついた永倉と原田も、声を発することも出来ないのでした。 雨はやっと上がり、空は明るくなっていました。 歩の遺体を屯所に連れ帰り、その前に座する隊士達。 そこへ、土方が遅れて入ってきます。 額の皺は深く、握った拳は震えていますが、発した言葉は短いものでした。 「言いたい事はそれだけかね」と、暗に非難する山南。 すぐに部屋を出た土方を総司が追いかけます。 「桝屋の野郎をひっぱる。」と、続ける土方を、総司は 「貴方のせいじゃない」と、気遣うのでした。 空は梅雨の合間に青さを増していました。 屋根に登っている烝に近寄ろうとする鉄。 烝は「来んな!」と拒みますが、何時の間にか背中合わせに座っています。 「犬っコロが負け犬笑いに来よったんか。」と自嘲する烝に、鉄は 「オレさ、歩姉の最後のメシ残しちゃってさ」と涙ぐむのでした。 そんな鉄に、烝も、自分の感情を吐き出し、自分が中途半端だと、そして、阿呆らしくて腹が立って、腹立ちすぎてあちこち痛いとうめく様に呟くのでした。 (この時の桜井さんが、もう~~~秀逸!!! 途切れ途切れに、涙混じりに、しかも京都訛りで紡がれた言葉が切ないです。) 「そういうのを『悲しい』っていうんだ。」 と、鉄。一度も『姉上』と呼べなかったのを悔やみつつ涙を流す烝に、手を握らせておくのでした。 目覚めた2人は、まず相手が寝ぼけて屋根から落ちたと慌てた様子。頭をガチンコしてギャグモードになってます。 でも、お互いに前言を撤回し、ダチは名前で呼ぶ主義の鉄に 「ススム!」と呼ばれて 「ちょぉ待ち!」と確認したくなる、やっぱりカワイイ山崎なのでした。 今回、鉄の目が、チョットだけ大きいかな?というのがありましたが、絵がとてもきれいでした。 今回の作画監督さんは『中嶋敦子』さんという、有名な方らしいです。マリ見てのエンディングもそうだとか。(ああ、オタクっぽいマイナーな話題だ) ところで、番組の冒頭で、DVDのCMがありますが、それが既に『池田屋』のシーンで、なんとコミックスでは別行動していた筈の左之助までいるのですよ。槍を操るシーンがカッコいいの。 アニメでは左乃助も池田屋襲撃に参加するのでしょうかね。 来週は、桝屋襲撃。そして、鉄之助と鈴(と先生)ですね。 あと7話で終わりなんて、寂しいです。 |